2023年10月24日火曜日

02.Volumioの成長

RaspyFiからVolumioへ。
ラズベリーパイから専用ハードへ


 ラズベリーパイCPUの限界 


ミケランジェロ氏のソフトウェアは RaspyFiとして始まったが、好評を得て世界に広がるにつれてRaspyFiという名前がラズベリーパイに限定されてしまい、今後のより優れたハードウェアにそぐわないと彼は考えるようになった。ラズベリーパイは単に旅の始まりに過ぎないのだ。また、このようにマニアックなガジェットだけではなく、より広く音楽愛好家たちにアピールする必要も出てきた。そこでミケランジェロ氏は「Volumio」という言葉を考え出した。これはイタリア語で「私の音量」の意味を示す造語である。これは音楽愛好者それぞれに合わせた最高の音楽体験をも意味している。
 

こうして生まれたVolumio はネットの世界でも話題となっていった。Volumioはオープンソースソフトウェアとして開発されていたことも人気の一翼を担った。これはバグの報告による安定化への貢献のほかに多言語対応にも及び、それがユーザー層のさらなる拡大にもつながっていた。ミケランジェロ氏はコミュニティの重要性に対して、「結局のところ、私たちは音楽愛好家のために何かを作っているのだから、私たちが何を重要視すべきなのか、他の誰が教えてくれるのだろうか?」と語っている。ラズベリーパイは学習用であるがゆえに入出力に優れたデバイスで、USBのみならずHDMI、ネットワーク端子も初めから搭載されていた。さらには独自規格の40ピン端子でI2S出力まで可能だったので、これによって徐々にオーディオ専用拡張ボードも出始めてきた。


やがて2016年にはVolumioがタッチスクリーン対応になった。ラズベリーパイにタッチスクリーンを取り付け、専用のDACボードに専用のケースを取り付けるとそれなりにネットワークプレーヤーらしきものになった。はじめは基板だけの玩具のようなものだったが、徐々にプレーヤーとしても形が出来てきたのだ。独自端子を用いた専用のDACボードも増えてきた。しかし、この独自端子への移行は世界が広がるようにも見えたが、同時にハードウェアにラズベリーパイを使用することの限界をも意味していたのだ。


ラズベリーパイはもともと低年齢層や貧困層にもコンピュータを届けるというコンセプトの低価格コンピュータなので、簡易化・安価にするための工夫が随所にみられた。
例えば DACは高価なので搭載されず、内蔵のアナログ出力は簡易な変換回路を使って音を出しているのみだった。もっとも深刻なのは簡易化のため USBとネットワークのデータ帯域が共用されていたことだ。このためUSBの信号とネットワークの信号が同一経路で競合し正常に処理できないという事態が起こった。
Volumioはハイレゾ再生が可能でDSDのネイティブ再生までできたのだが、USB DACを使用中にネットワークを使うとクリック音やポップ音のノイズが生じるという事態になった。これはラズベリーパイに搭載しているCPUの限界も示していたのだ。


さらにラズベリーパイがストレージとして依存しているSDカードは、Volumioがこのリスクを最小限に抑える対策をしているとはいえ長時間使用すると故障しやすいものだった。ラズベリーパイ自体も2、3と進化していったが基本的には変わらなかった。オーディオに向いたハードウェアではないのだ。

 ハードウェアとソフトウェアのシームレス化を目指して 


そして 2018 年に初代 Primo (現在の Primo の前身) が開発された。 
Volumio専用のハードウェアを持ったネットワークプレーヤーだ。Primoはイタリア語で「最初」を意味する。


これはミケランジェロ氏が Volumioという名前に込めた哲学の実現にはハードウェアとソフトウェアのシームレスな統合が必要だと考えたからだという。音質と使いやすさを両立させたVolumioの能力をフルに発揮するためには専用のハードウェアが必要だった。それには専門知識がなくても誰でも箱から出してすぐに素晴らしい音質を得られるソリューションとして考案された。この哲学はいまでも変わらないとミケランジェロ氏は言う。


初代PrimoにおいてOSは初めからインストールされていて、先に書いたような大変な手間は必要がなくなった。そして核となるVolumioを乗せたコンピュータはラズベリーパイに変わってASUS Tinker Board が採用された。
当時はこうしたシングルボード・コンピュータがビジネスにも使われようと進化と多様化を遂げていた時代であった。Tinker Board はラズベリーパイに似たシングルボード・コンピュータだが、USB とネットワークはきちんと別々な経路として設計されていて、アナログ出力のためにDAC ICも搭載されていた。当時最新のラズベリーパイ3に比べてメモリーもCPU性能も余裕があった。これらによってハイレゾ出力も楽に可能で、ポップノイズも生じることなく、さらに透明度の高い音質を実現することができた。


さらに初代Primoには低ノイズの電圧レギュレータや高精度クロックなどのオーディオ用のパーツが採用され、DAC IC として ESS 社の ES9038Q2Mを搭載していた。入出力は有線・無線LANの他にRCAアナログ出力やS/PDIF デジタル出力も備えていた。


筐体もスイッチ類などのないすっきりとシンプルで美しい外観デザインもミケランジェロ氏の哲学をよく表したものだった。セットアップも簡単になり、内蔵の「ホットスポット」Wi-Fi に接続することでリモートで行えるという現在の製品群に近いものを備えていた。当時の海外の記事を見ても音質評価は大変に高いものだった。


こうしてVolumio は専用のハードウェアを持つに至った。


Volumioではまずミケランジェロ氏の音楽体験の向上に対する理想があり、それを達成するためにはソフトウェア単体だけでは難しいため、新たにハードウェアを開発するに至ったわけだ。ソフトウェアとハードウェアは密接に関連して調整が行われる。ソフトウェアがハードウェアと一体化したデバイス上で動作するので安定性が向上して、設定やアップデートが簡単に行える。なによりもオーディオに向いたパーツを搭載して、オーディオに必要な入出力を備えることができるのだ。










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